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東京国際映画祭/グランプリ/最優秀監督賞(吉田大八)/
最優秀男優賞(長塚京三)の3冠達成!
熟練を極めたクリエイターと俳優挑む、人生最期の「讃歌」。
渡辺儀助、77歳。全てに気を配り、日常を管理し節制した平穏な日々を送る元大学教授。妻に先立たれ、講演や執筆といった臨時の収入も減っていくなか社会から必要とされなくなったことを実感し、あと何年で預金が底をつくかの計算に余念がない。しかし、その一方で自身のプライドは保ちつつ、誰かを傷つけることもなく、限られた僅かな交友関係の中で、充足感に満たされてもいる。老い先が短いことを自覚する儀助にとって、新たに挑戦することが少なくなり、退屈を手なづけ、これまでの人生を振り返ることが多くなる。そして、次第にその光景は現実なのか、夢なのか、分からなくなっていく。
そんな平穏な暮らしのなかで「敵」はある日突然現れる。そして、じわりと近づいてくる。
自由に生きることへの羨望と、老いることへの絶望の狭間で、人生の最期に向かって静かに、そして清らかに暮らし、そのまま静かに終わっていくひとりの男……人間はそんな生き方を望んでいるのだろうか。本当は「敵」の襲来を望んではいないか。
全ての人に等しく訪れるであろう「敵」を見事なまでに映し出した、人生最期をどう締めくくるかを問う、心揺さぶる人間ドラマが誕生した。