
特別じゃない旅が、ちょっとだけ毎日を変える。
とある大学の講義室のスクリーンに映画が映し出されている。つげ義春の漫画「海辺の叙景」を原作に、李(シム・ウンギョン)が脚本を書いた映画を、授業の一環で上映していたのだった。上映後、李は学生から映画の感想を問われ、「私には才能がないな、と思いました」と答える。講義を終えた廊下で、李は魚沼教授(佐野史郎)と立ち話をする。浮かない顔の李に「気晴らしに旅行にでも行くといいですよ」と飄々とした口調で声をかける教授。
冬になり、李はひょんなことから雪に覆われた山奥を訪れ、おんぼろ宿にたどり着く。宿の主人・べん造(堤真一)はやる気がなく、暖房もまともな食事もない。ある夜、べん造は李を夜の雪の原へと連れ出し…
『夜明けのすべて』『ケイコ 目を澄ませて』の三宅唱が監督・脚本を手がけ、つげ義春の短編漫画を原作に撮りあげたドラマ。「怪しい彼女」「新聞記者」のシム・ウンギョンを主演に迎え、行き詰まった脚本家が旅先での出会いをきっかけに人生と向き合っていく様子を、三宅監督ならではの繊細なストーリーテリングと独特の空気感で描き出す。世界で最も歴史ある国際映画祭の一つであるロカルノ国際映画祭にて日本映画では18年ぶりとなる金豹賞《グランプリ》を受賞した。
